Greetings! Welcome to the Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades!
直訳すると「ホットドッグと蹄鉄と手榴弾」という謎の名称のゲームの正体は何かと言えば、ずばり「射撃場」のゲームです。正式名称が少し長いため、略して「 H3VR 」と呼ばれています。
このゲームの面白いところは「正しく銃が機能すること」です。どういうことかと言いますと、一部のVRゲームでは、銃のリロードを簡略化したり、場合によってはそもそもリロード動作が省略されたりします。それとは異なり、H3VRにはそれが一切存在しません。
確かに、シューティング系のVRゲームにおいて、リロードは操作の確実さも含めて混乱を起こしやすい点があげられます。「ゲーム」としての要素を優先するのであれば実際には、あまり必要ではないかもしれません。ですが、世の中の人がすべてそうではありません。銃をガチャガチャ弄ることに楽しさを見出す人は結構います。そのような方達のためのVRゲームこそが、「H3VR」なのです!
目次
拳銃というものは、概ね3つに分けられます。「回転式拳銃」「自動拳銃」、そして「デリンジャー」のような中折式があります。H3VRには当然この三種類が存在します。更には回転式拳銃も「固定式、中折式、降出式」が揃っておりますので、MGS3のオセロットよろしくシングルアクションアーミーを握りしめて
『不思議だ、この緊張感!』『マグチェンジでは到底味わえない!』『リロードタイムがこんなにも息吹を!』
とか言いながらリロードするなんてことも可能となりますね。
さらには、ガンスピンなどもできるため色々と真似できるはずです。モデルガンでやるよりも更に難しいですが。。その他、トリガーを引きっぱなしにしたままハンマーを連続で上げることで連続射撃する「ファニング」などの真似も可能です。自動拳銃もM1911のようなグリップ内にマガジンのあるタイプと、モーゼルC96のようにグリップとマガジンが別のタイプがあります。
そして、H3VRをプレイしていると一つ気づくことがあります。それは「拳銃を当てるのは難しい」ということです。たとえそれが5m先の人間サイズの標的であっても、意外と当たらないことを実感できます。
▼筆者実践動画
短機関銃(いわゆるサブマシンガン)は「拳銃弾を連射できる銃」のことで、駆動方式が大きく分けて2つ存在します。
一つ目は「オープンボルト」方式です。構造が単純で安価な反面、精度が悪く『とりあえず弾をばらまければいい』というものです。ちなみにオープンボルト方式はほぼサブマシンガンでしか採用例がありません。今回は有名所としてIMI ウージーと”水道管の銃”ことステンガンを撃ってみます。
二つ目もう一つが「クローズドボルト」方式です。精度が高い分価格も高く、サブマシンガンとしてはどちらかといえば異端な存在です。ただし、警察用途が殆どになってしまった現代ではこちらのほうが主流となっています。今回は日本の警察でも使っているMP5とその派生型MP5K-PDWを撃ってみます。
ちなみにHK社の一部銃器には構造上『HKスラップ』という動作を求められます。これはリロードする際、チャージングハンドルを手前に引いて溝に引っ掛けてからリロードし、リロード後ハンドルを軽く叩いて元の位置に戻す動作のことで、映画で見たことがある人も多いかもしれません。この動作はHK社の公式動画でも確認することができます。
出展:Heckler & Koch GmbH(HK社公式)
▼筆者実践動画
ウージー、Stem Mk2、MP5A5、MP5K-PDWの順に撃っています。
小銃は薬室に弾を人力で装填するレバーアクション式とボルトアクション式、そして反動やガス圧で自動で装填する自動小銃の2つに分けられます。
今回は、ボルトアクション式で銃剣がつくM1903と有名所の自動小銃としてM4A1、AK47、変わり種としてM1ガーランドを撃ってみます。特にM1ガーランドは弾を打ち尽くすとクリップが「カシャーン」と音を立てて飛ぶのも再現されているので注目です。
▼筆者実践動画
M1903、AK47、M4A1、M1ガーランドの順に撃っています。
狩猟用としておなじみの散弾銃です。今回は機構が面白いものとして、「セミオート/ポンプアクション」切り替えが可能なSPAS-12とターミネーター2などで「片手で回すやつ」ことM1887を撃ってみます。
▼筆者実践動画
M1887、片手で扱えはするのですが排莢*(はいきょう)するのがちょっと難しいです。
*排莢 = 発射を行った後に薬室に残る使用後の薬莢(やっきょう)を銃の外に排出すること。
いわゆる「バズーカ」「RPG」の類です。H3VRにもバズーカはありますが使いにくいので、代わりにお手軽軽量で建物をふっとばすのにピッタリな使い捨てのM72と紛争地帯のどこでも手に入るロケットランチャーといえばコレ、RPG-7です。M72はしっかり当たるのにRPG-7は未だに照準器の見方がわからないので当たっていません。
▼筆者実践動画
現代の金属薬莢の銃に慣れ親しんだ人には、余り興味を持たれないタイプの銃です。ざっくりいうと「火縄銃(マッチロックマスケット)」に近い、銃口から装填するタイプの古い銃です。H3VRに登場するものとしては最も古いタイプの銃です。これより古いハンドカノンやマッチロックはありません。
筆者としてはH3VRでこれが実装されて無ければ自分でこれをやるためだけのVRゲームを開発しようかと本気で考えていたほどの代物で、これが実装された日には2時間近く延々射撃していました。
装填するには、まず銃弾と火薬を紙でまとめたペーパーカートリッジを口の所まで持っていきます。中に入っている火薬を落とさないように銃口まで持っていき、火薬を下にして火薬と銃弾を銃身に入れます。紙ごと入れる場合と入れない場合がありますが、H3VRでは紙ごと入れます。
銃身の下についている槊杖(ラムロッド)で弾と火薬を置くまで押し込み、ハンマーをハーフコックにしてから火皿に火薬を盛ります。盛ったら火蓋を閉めます。銃身にカートリッジを入れる前に火皿に火薬を盛る事もありまする、H3VRでは別途火薬袋から盛ったほうが確実です。
これで射撃準備完了です。
▼筆者実践動画
ああ、火薬の匂いがする。最高です。
火縄銃と違って引き金を引いてから弾が出るまで若干の時間がかかるのが特徴です。最高ですね。筆者はこれを定期的にやらないと禁断症状が出ます。これぞ火薬中毒ですね。
〈 小話 〉
フリントロックマスケットのような銃が剣や槍、弓の時代を終わらせたことが信じられない人もいるかもしれませんが、ここでよく考えてみてください。
自分は槍や剣を持っていて、こんな銃を持った人間が目の前に何百人、時によっては視界の限界まで数千数万人単位で立っており、敵の連隊指揮官が
「Make Ready!(ハンマーをフルコックにする」
「Present!(敵に向けて銃を構える)」
「Fire!(撃て!)」
と号令をかけ、一斉に発生した轟音と閃光の直後、自分めがけて大量の銃弾が飛んできます。これを恐ろしくないと感じる人間はごくわずかでしょうだろう。仮に突撃に成功したとしても接近する頃には敵は「Fix your Bayonet!(ライフル銃に銃剣を装着せよ!)」の号令で銃剣を装着しているのです。火薬を用いないあらゆる武器は、火薬の発する音と閃光、そして圧倒的な数と火力の前にねじ伏せられ、戦場から消えていきました。しかし槍は、銃剣に名前を変えて一応残ってはいます。
このような歴史を思い浮かべながら、銃以外のあらゆる武器を戦場から退場させた戦列歩兵というものに少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
ほとんど筆者の趣味話のような内容が続いておりますが、、次に紹介する銃は実在しながらもH3VRの中でもかなり奇妙な銃です。
▼筆者実践動画
ウェルロッド、SWヴォルカニック、MK22、HK G11の順に撃っています。
ウェルロッドはゲームなどではほぼ登場しない銃でイギリスの特殊作戦用に開発されたボルトアクション式ハンドガンです。消音装置とサプレッサーを内蔵しており、グリップとマガジンが兼用だったりなど、かなり変わった銃です。
H3VRにおけるウェルロッドはだいぶこだわって作られており、なんと銃を撃つたびにサプレッサーが擦り減って音が変化するように作られています。動画ではサプレッサーが既に擦り減っているウェルロッドを用意していましたが、サプレッサーを交換する前後の音の違いがおわかり頂けますでしょうか。
SWヴォルカニックは、1850年頃開発された「銃弾自体に推進薬を内蔵した”ロケットボール”を用いるハンドガン」です。この構造は、そこそこ知ってる人がは多いと思われる「ジャイロジェットピストル」と同じもので、100年以上前には類似した構造のものが作られていたことになります。
SW Mk.22はサプレッサーを搭載することを前提にした拳銃で、スライドロックレバーを搭載することで通常の拳銃にサプレッサーを搭載するよりも高い消音効果を得られるようになっています。ただし一発撃つごとに手動で排莢*(はいきょう)する必要があります。
*排莢 = 発射を行った後に薬室に残る使用後の薬莢(やっきょう)を銃の外に排出すること。
HK G11は薬莢のない弾(ケースレス弾)のために開発されたライフルなのですが、既存の銃とはかなり異なる見た目をしており、その上ケースレス弾という考え方自体が当時は不具合だらけで実用出来るものではなかったため、HK G11は失敗作とされました。
H3VRには実在していますが、完全にジョークで作っている銃も実装されています。
■ Whizzbanger
12.7*99mm、いわゆる50BMG弾を固定できるグリップとファイアリングピンです。ハンマーが内蔵されず、人力でファイアリングピンの底部を叩くことで弾が発射されます。ライフルに限らすほとんどの実包というのは、金属製のケースに火薬と銃弾と雷管がセットになったもので、雷管は強い衝撃を与えると発火します。つまり実包の底部を尖ったもので殴ると弾が出るのです。
つまり、ちくわにハンマーとファイアリングピンを固定できればちくわに実包を装填して銃として運用できることとなるため日本の銃刀法を文面通り理解しようとすると、ちくわにハンマーとファイアリングピンを固定したら逮捕されてしまう…ことになります。
■ Potato Cannon
H3VRに登場する(実在する)銃器類としては唯一、日本で何ら規制無く所持することが出来るものです。塩ビパイプにジャガイモを装填し、発火性のガスを吹き付けて底部を閉鎖し、着火装置を使うとジャガイモが勢いよく発射されまする。
■ Kolibri9001
世界最小の拳銃「コリブリ」…のハズなのですが、VRで扱うには小さすぎるため長らく実装されていませんでした。あまりにも実装を望む声が多かったためにやけくそ気味に実装し各寸法10倍サイズで実装されています。
H3VRはただ撃つだけではなく、幾つかのゲームモードが存在します。最も遊ばれているのは「Take and Hold」というゲームモードです。マップ上に現れるHoldポイントを防衛し敵を倒しながら『エンクリプション』という空中に現れるオブジェクトを射撃するというものです。
▼筆者実践動画
H3VRは公式ではありませんがModに対応しています。概ねマップを追加するものと武器を追加するものの二種類ですが、武器を追加するものでも更に2つに分けられます。
単体の武器を追加するModとH3VRのアクセサリー機能を使った「モジュール」で武器を組み上げるものの二種類です。前者の例として「ピターセン・デバイス」、後者の例として「モジュールAR-15」の動画を載せます。
▼筆者実践動画
■ ピターセン・デバイス
一次大戦末期に開発された、ライフルに排莢*(はいきょう)用の穴を開けて、ボルト部を交換するだけでサブマシンガン相当の射撃ができるようになる画期的なデバイスです。
*排莢 = 発射を行った後に薬室に残る使用後の薬莢(やっきょう)を銃の外に排出すること。
サブマシンガンを含む連射ができる自動火器が塹壕(ざんごう)*戦で有効であることが認識されたあと、それらの装備を手っ取り早く生産、配備するために考案された「苦肉の策」です。現存する実物の動作、僅か4ヶ月で65000丁を生産している辺りからすると極めて優れた武器であると言えます(少なくともショーシャ機関銃よりは)。H3VRのModではボルト部の交換はできないものの、動作の再現度は高いです。
*塹壕 = 戦争において敵の銃砲撃から身を守るために陣地の周りに掘る穴または溝。
■ モジュールModule AR-15
複数の作者によって作成されている、M4やM16シリーズを含むAR-15系統の武器を部品単位で追加するModです。ロアレシーバー、アッパーレシーバー、チャージングハンドル、バレル、マズルデバイス、フォアグリップ、バッファーチューブ、ストックを組み上げます。
▼筆者実践動画
ちなみにModにはモデル関連で商用のゲームから流用したり等、権利的にマズいものも多いので注意が必要なのですが、モジュール系のModはそもそも普通のゲームでは内部まで細かいモデリングをするはずがなく、VR系ゲームでもここまでする例は存在しないため逆説的に流用元が存在し得ません。むしろここまで大量の部品をモデリングする彼らの熱意が恐ろしいです。
ちなみにTake and HoldでMod武器が出てきてしまった場合はアイテムスポナーありの設定にしていないと、このようになって詰みなのでリセマラは割と普通です。
▼筆者実践動画
H3VRの楽しさとは銃をいじくり倒すことであるという観点から、主に『メジャーな銃』『特殊な操作が必要な銃』を中心に紹介しました。これら以外にも多数の銃を手にとって遊べるのがH3VRの魅力で、今後も様々な銃が追加されるでしょう。
執筆時現在、アルファ版においてもリボルバーのくせにブローバックしてハンマーが起きるフェブリーのオートマチックリボルバーやおにぎり型の弾薬をクリップを使いグリップ内のマガジンに給弾し、挙げ句自動排莢までするというリボルバーの定義とは何かという事まで考えさせられるダーディック Model1500…等の変態銃が既に登場しています。
現実では入手不可能または極めて高価になる変態銃です。H3VRが今後更にお手軽かつ気軽に遊べる謎のゲームとして発展することを筆者は期待しています。