もくじ
1|デバイス概要と前置き 2|基本スペック 3|アプリの互換性 4|使用した魅力や比較 4-1 液晶の見え方 4-2 コントローラー 4-3 MR・パススルー 4-4 アイトラッキング・フェイシャルトラフィック 4-5 使用感・装着感 4-6 バッテリー 5|総括 |
1|デバイス概要と前置き
2022年10月26日、MetaはMRにも対応した高性能VRヘッドセット「Meta Quest Pro」を発売しました。
Meta Quest Proは、主にビジネス利用を想定したデバイスで、10月12日に発表されたばかりのSoC(System-on-a-chip)の「Snapdragon XR2+ Gen1」が初めて搭載されています。ヘッドセットはパンケーキレンズによって薄型化し、外側の3つのカメラによってフルカラーのパススルーでMRやハンドトラッキングが可能です。
また、アイトラッキング用とフェイストラッキング用の赤外線センサーが5つ搭載されているため、VR空間上で表情豊かなアバターコミュニケーションや視線操作、コンテンツを体験するユーザーの視線追跡や表情変化を利用するユーザー行動調査・研究などの利用も期待できます。
更に、コントローラーにもカメラが3つとQualcomm Snapdragon 662モバイルプロセッサーが搭載されており、360度の手の動きにも対応し、直感的で細かな操作感を体験できます。スタイラスペン先も付属しており、絵や文字を書く動作が実際のペンを持つように操作できます。Meta Quest Touch ProコントローラーはMeta Quest 2との互換性があります。
Meta Quest Proでは、Meta Questストアのアプリケーションやゲーム等を利用することが可能であり、Meta Quest Link機能を使ってOculus Rift、Steamのコンテンツも利用できます。そのため、Meta Quest 2ユーザーは、Meta Quest Proでもこれまでと同様のコンテンツを利用可能です。
当記事では、「Meta Quest Pro」の魅力や機能を紹介するため、他機種との比較を交えながらレビューします。購入、レンタル、実際に使用する際の参考になればと思います。
2|基本スペック
基本スペックをご紹介するにあたり、他機種と比較したスペック表を作成しました。比較した機種は、一般ユーザー向けの「Meta Quest 2」、そしてMeta Quest Proと同時期に発表された「PICO 4 Enterprise」(フェイストラッキング、アイトラッキング、フルカラーMR等が可能)です。
▼スペック比較表
※表が一部隠れている場合は、右へスクロールしてご覧いただけます。
※ Meta Quest 2は比較しやすくするために重量・サイズの比較時はEliteストラップ バッテリー付きを装着しております。
|
Meta Quest Pro |
Meta Quest 2 |
PICO 4 Enterprise |
スタンドアローン |
○ |
○ |
○ |
PC接続 |
○ |
○ |
○ |
トラッキング |
6DoF、フェイストラッキング、アイトラッキング |
6DoF |
6DoF、フェイストラッキング、アイトラッキング |
パススルー |
フルカラー |
モノクロ |
フルカラー |
|
MR/VR |
VR |
MR/VR |
SoC |
Snapdragon XR2+ |
Snapdragon XR2 |
Snapdragon XR2 |
RAM |
12GB |
6GB |
8GB |
ストレージ |
256GB |
64GB/128GB/256GB |
256GB |
ディスプレイ |
LCDディスプレイ ・片目あたり1,800×1,920 |
高速スイッチLCDディスプレイ ・片目あたり1,832×1,920
|
LCDディスプレイ ・片目あたり2,160×2,160
|
IPD |
55~75mm(無段階) |
58/63/68mmで調整 |
62~72mm(無段階) |
オーディオ |
ステレオスピーカー、マイク、3.5mmオーディオジャック |
ステレオスピーカー、マイク、3.5mmオーディオジャック |
ステレオスピーカー、デュアルマイク、 |
無線通信 |
Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 |
Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
端子 |
USB Type-C |
USB Type-C |
USB Type-C |
コントローラ |
2機 サイズ:130×70×62mm |
2機 サイズ:90×120mm |
2機 電池:単3形乾電池×4 |
サイズ (奥行き×高さ×幅) |
265×127×196mm |
265×114×185mm (比較のためEliteストラップ バッテリー付きをつけた実測値) |
255×106×195mm |
重量 |
722g |
639g (比較のためEliteストラップ バッテリー付きをつけた実測値) |
591g |
バッテリ駆動時間 |
約1~2時間 |
ゲーム:約2時間 動画視聴:約3時間 |
約3時間 |
スタンドアローン時のアプリストア |
Meta Questストア |
Meta Questストア |
Pico Business Store |
価格 |
256GB:¥226,800 |
64GB:販売終了 128GB:¥59,400 256GB:¥74,400 |
256GB:¥141,900 |
3|アプリの互換性
Meta Quest ストア上のこれまでMeta Quest 2で使用できたアプリは基本的に「Meta Quest Pro」でも使用できるため、現時点においても「Meta Quest Pro」で多種多様なアプリを試してみることができます。PICO 4 EnterpriseやPICO 4はそれぞれ独自のストアがありますが、PICO 4のストアでは約240種類、Meta Quest ストア(App Labを除く)では410種類以上のアプリが配信されています。
また、「Meta Quest Pro」はPCVRとしての利用もできるため、Steamで配信されているVRゲームなどもAir LinkやLinkケーブルを使用して体験することができます。
4|使用した魅力や比較
4-1 液晶の見え方について
Meta Quest Proは映像が非常に鮮明で、VR内でPC画面をミラーリングした際にも文字がしっかりと読み取れるほど画質が良いです。Meta Horizon Workrooms内でPC画面を見てもURL等の小さな文字も視認することができるので、メタバースオフィスで仕事や会議が可能な点はかなり実用的に活用できると筆者は感じました。
ちなみにMeta Quest 2やPICO 4もかなり鮮明ではあるので、それらを使用したことのある方はあまり劇的な変化を感じづらいかと思いますが、VIVE CEを使用したことのある方は大きな変化を感じられると思います。
▼筆者のスマートフォンがあまり接写に向いていないためボケていますがレンズを直取りした写真です。写真越しでも読める程きれいに写っています。
また、「Meta Quest Pro」は瞳孔間距離も細かく設定できるためピントを合わせもしやすい仕様です。レンズの縁をスライドすることで調節ができ、調整する際に画面に数値が表示されるため自身に合った距離設定を把握しやすく、かなり使いやすいと感じました。数値としては60~70mmまで動かすことができました。
PICO 4もMeta Quest Proと同様に細かく設定できますが、メニュー内の設定を開かないといけないため、Meta Quest Proのように手動ですぐに調節できる点は魅力的だと感じました。
画質の良さは実際にMeta Quest Proをレンタルして是非体感していただきたいです!
4-2 コントローラーについて
各コントローラーに3つのカメラとSnapdragon 662モバイルプロセッサが内蔵されており、Meta Quest 2のコントローラーよりも可動域が広がり、手を真上に上げたり後頭部に手を動かしたりしても認識されます。筆者はよくMeta Quest 2を使うため動きが途切れないことに驚きました。
操作感もかなりよいです。スタイラスペン先をコントローラー下部に取り付けてペン先でデスクに文字を書く動作ができ、実際に紙にペンで字を書く感覚で使えるため、メタバース空間のオフィスなどでもかなり実用的な使い方ができそうだと感じました。デジタル資料に直接書き込んだり、手書きのメモ等を取れたりすることはかなり便利そうです。
あまりにも書き心地が良かったので絵を描いてみました。
短い線等もしっかり書くことができ、かなり細かな動きまで認識しているなと感じました。
▼Horizon Workrooms にてスタイラスペンを試した際のスクショです。
Meta Quest 2と合わせての利用が可能で、アストネスで Meta Quest Touch Proコントローラー のみのレンタルもあるため操作感を是非体感していただきたいです。
4-3 MR・パススルーについて
画質はそこまで良くなかったものの、Meta Quest Proはフルカラーで立体感のある映像を見ることができるためHMDをつけながら歩いたりものを取ったりすることができ、MR環境でデスクワークもできるので開発等にも使えそうだと思います。一方、PICO 4でも高画質なパススルーが可能ですが、立体感があまりなく、近くの物と距離感がつかめなかったりするのですが、Meta Quest Proだとそこは気にならなかったので没入感は圧倒的だと思います。
Gravity Sketchで実際にMR空間にモデリングをしました。実際のモデルのサイズ感を感じながら作業でき実用的だと感じました。
▼Gravity Sketchで作ったモデル:Meta Quest Pro(左)とPICO 4(右)で見たスクショです。
4-4 アイトラッキング・フェイシャルトラッキングについて
Meta Quest Proのアイトラッキングでは、ヘッドセットや特定のアプリで目の赤外線画像(未加工の画像データ)を分析して利用者がVR内でどこを見ているかの推定値を作成することができます。そのため、視線分析を使用したデザインやレイアウト、マーケティングでの視線誘導等の利用ができそうです。
フェイシャルトラッキングやハンドトラッキングを併用して、身振り手振り+表情を使ったリアルと変わらないコミュニケーションも可能です。
こちらはHome内にある鏡で撮影したアバターです。筆者の笑顔がぎこちないため何とも言えない表情ですが、表情豊かな人が使えばかなり動きます。口を横にずらしたり目を見開いたりする変わった動きもしっかりと認識しておりました。筆者はメガネを掛けているのですが、眼鏡越しでもしっかりとアイトラッキングを利用できていました。
VRのコミュニケーションは相手の本当の表情が見えないことが多いので画期的だと思います!
4-5 使用感・装着感について
Meta Quest Proは装着時に密閉されないためメガネが曇らないのはありがたいと感じました。しかし、レンズの左右と下から周囲が見えるため、VRとしてしっかり楽しみたい方は付属品の「遮光ブロッカー」を使用するか、より暗くしたいのであればMetaから出ているアクセサリーの「Meta Quest Proフル遮光ブロッカー」の併用をおすすめします。
4-6 バッテリーについて
前述したHorizon WorkroomsやGravity Sketchをしっかりと遊んだ際、バッテリーの消耗が早いと感じました。1時間で50%以上は減っており、公式ページの記述の通り約1~2時間という感じでした。VR機器をそこまで連続で長時間装着することもないと思いますので、一見短いように感じますが支障はない持続時間だと感じます。
充電の際に他機種だとコントローラーとHMDをそれぞれ充電することが多いので、コンセントが埋まってしまったり、ケーブルまみれになったりすることが多いですよね。しかし、Meta Quest Pro は専用の充電ドックが付属しており、コントローラーとHMDを一度に充電できるのはとても便利です!
5|総括
Meta Quest Proは、スタンドアローンでありながら今まで出てきた様々なVR機器にはない体験ができる機器だと思います。デスクワークや会議などで小さな文字を見ることができる液晶の綺麗さがあり、コントローラーの操作性の向上を感じられる機器です。アプリの互換性、PCVRとしての使用する際には既存のアプリケーションがよりよい環境で体験できるようになったこともかなり優秀だと思います。フェイシャルトラッキングを利用してのコミュニケーションは勿論、アイトラッキングを使用してのマーケティング調査なども可能でビジネスでの利用でも期待できます。
販売価格は226,800円と他機種に比べ少々高いと感じる部分はありますが、着用してみると買う価値のある価格だと感じられました。即決するには難しい価格帯ではあるので、まずは Meta Quest Proをレンタル( 3泊4日 ¥15,980~ )して実際に体験してみることをおすすめします。