HP Reverb G2詳細レビュー&問題対策案

執筆:Luck【ラック】 

皆様ごきげんよう、今回はアストネスさんの依頼でHP Reverb G2(以下、 Reverb G2)のレビューをする事になりました。 

執筆時現在はまだ正式に発売されておらず、先⾏予約をした⽅のみに⾏き渡っている機種となります。 (2021年1月28日国内発売、公式ウェブサイト

今回、縁あってレンタルをさせて頂いたので、主にVRChatでの使⽤を前提として、Valve Index(以下、Index)Oculus Rift S(以下、Rift S) Oculus Quest 2(以下、Quest 2)の3機種と⽐較しながら、詳細なスペ ック検証やレビューをしていきたいと思います。 

発売前リーク情報では期待して良さそうでしたが実際はどうなのか、最後までお付き合い頂ければ幸いです。 

【注意】
完全に主観による評価になります。情報に間違いや齟齬が発⽣する可能性がある事をご了承下さい。 また、記事を参考にVRHMDやPCパーツ等を買った際、問題が発⽣しても筆者は責任を負いかねますのでご了承の程お願いします。

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基本スペック

 

  • 解像度:2160 × 2160(片眼)、4320 × 2160(両眼)
  • リフレッシュレート:90Hz 
  • パネル:LCD(液晶) 
  • 視野⾓:114度 
  • 重量:600g (メーカー公称:約500g、ケーブル除く)
  • IPD調整:ハードウェア調整 
  • トラッキング:6DoF
  • トラッキング⽅式:インサイドアウト(新型Windows MR)
  • 特記事項:ケーブル長 6m、オフイヤースピーカー搭載、コントローラーは旧Windows MRと互換性有り、VRHMD⽤眼鏡「VRsatile対応 
  • 価格:HMD 65780円(税込)、 コントローラー 後日発売予定

外箱

⿊い不織布に⼊れて送られてきました、購⼊の際もこの形でパッケージされているそうです。

布を外すとこんな具合。

下段、説明書の箱とケーブル類が⼊っている箱に、HMDと同じくコントローラーが不織布に⼊れられています。

布を外した図。

付属品

写真ではケーブルキャップや結束ワイヤーを外してしまっていますが、実際は付いた状態で送られてきました。 

今回はレンタルという事もあり、使い捨てのニンジャマスクも3枚同封されています。

また、写真では外していますが、VR COVER社製のカバー(Valve Index用の製品を流用)が付いた状態で輸送されてきました。 

使⽤の際はこちらのカバーかニンジャマスクを利⽤していました。

本体ケーブルはDisplayPortとUSB Type-Cになっています。

USB Type-C → Type A変換も付属しています、3.0ではないと動作しないので注意。

mini DisplayPort変換アダプタも付属しています。

ゲーミングノートパソコンでは、DisplayPort端子が無い代わりにmini DisplayPort端子があることが一般的で、主にノートパソコンとの接続時に使用するものです。

HMD外観

⾒た⽬は Indexそっくりです、Valveが共同開発しているだけあります。

前から⾒た図、HPのロゴが光ります。

インサイドアウト⽤のカメラが全⾯パネルに2機搭載されています。

横から⾒た図、こちらにもインサイドアウト⽤カメラが搭載されています。

Reverb G2はダイヤル式のストラップ調整ではなくマジックテープでの調整となります。 

既存のHMDでは初代Questが⽐較的近い⽅式になります、Indexとは明確に違 う点の1つです。

 

フェイスクッションはIndexと同じくノーズレストと⼀体型、マグネットによる脱着式となっています。 

Indexとよく似ていますが互換性は無いので注意が必要です。

ノーズレストにかなり奥⾏きがあり、⿐の隙間から外の光が⼊ってくるといった事が少ないように思えました。 

没⼊感向上に⼀役買ってくれています。 

HMDの下部にはIPD調整⽤のツマミが付いています。

また、Reverb G2はデュアルマイクです、詳しくは後述します。

VRHMD⽤メガネ、VRsatileにも対応しています。

ゴムのすべり⽌めをメガネの上部に両⾯テープで張り付けて固定しています。VRsatileに標準で付いてくるゴムでも固定できそうです。 詳細はdiVRse公式サイトのお知らせからご確認下さい。 

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画質

筆者はグラフィックボードにRTX2070 SUPERを利⽤しています、その際のデフォルト解像度は3160×3092と圧倒的に⾼画質です。 

が、VRAM不⾜になってしまうのかVRChatではFPSが低くなってしまい、と てもではありませんが安定動作させる事ができませんでした。

そのため、動作の安定を優先し、画質を2236 × 2184まで落として利⽤しています。 画質を下げてもなお、基本スペックが良いせいか、IndexやQuest 2と⽐べとても綺麗に思えます。 

スクリーンドア(※1)も⼀切気にならず、また発⾊もQuest 2やRift S以上に良く、Indexと並び⽴ち液晶では良いように思えます。 

※1 スクリーンドア:ディスプレイに網⽬模様が⾒えてしまう効果、パネル構成により発⽣する現象。 

視野⾓

視野⾓は114度との事です、視野⾓100度のQuest 2よりも⼼なしか広いかなと 感じます。 

Indexの130度と⽐べると狭いですが没⼊感が致命的に削がれる事もなく、及第点といった所です。 

IPD調整

IPD調整はハードウェアでの調整が可能ですが、つまみの感度がかなりアバウトでピッタリと合わせるのが難しいです。 

私のIPDは65なのですが、仕⽅がないので64.9で使⽤しています。 酔いやすい、⾒⾟いといった事は特にありません。 

リフレッシュレート

90Hz、VRHMDによくあるリフレッシュレート数値です、特に語るべき事もありません。

ヘッドフォン⾳質

Reverb G2において特筆すべき点の1つです。 

Index同様、オフイヤースピーカーと呼ばれるヘッドセットを頭に装着した際に、⽿から浮いた状態で音声を聞く仕組みのスピーカーがあり、⼤変画期的かつ素晴らしい代物です。 ヘッドフォン型と違い⻑時間着⽤してもムレず、⽿が疲れず、かつ⾳質も良いです。 

ただし、⾳が周りに結構聞こえてしまうという⽋点もあります、家族や同居⼈が居る⽅は気にかかる点かもしれません。

マイク⾳質

前述した通りデュアルマイクを搭載しており、⼤変性能が良いです。 Indexとは別のマイクのようですが、Indexに匹敵するくらい性能が良いように思えます、少なくとも同じデュアルマイクのQuest 2よりもクリアに聴こえます。 

下⼿なピンマイクを利⽤するよりも、標準搭載されたマイクの⽅が性能は良いでしょう。 

装着感

メーカー公称値では約500gとの事ですが、実際測ってみたら600g程ありました。 

重量バランスが⾮常に良好で、⽬元に負担が無く、⼤変装着感が良いです。 今まで被ってきたVRHMD(初代HTC VIVE、HTC VIVE PRO、Index、Rift S、Quest 2、Acer AH101)の中でも最も装着感が良いと思えます。 

強いて悪い点を挙げるとすれば、HMDがズレた際にノーズレストが⿐に当たる時があります。 

この点は使い⽅や改造により改良の余地がありそうです。 

眼鏡を利⽤しての使⽤感ですが、使えなくもないといった具合です。Indexと違いフェイスクッションが多少横に広いおかげが、眼鏡のツル等はそこまで気になりません。 

とはいえ、あまり快適とは⾔い難いので前述したVRsatileの利⽤を個⼈的にはオススメしたいですね。 

尚、Rift SやIndexと違いHMD内の奥⾏きを調整する機能がありません、眼鏡によってはHMDのレンズと接触するかもしれません。 

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コントローラー

新型のWindows MRコントローラーとの事で、単品販売の予定もあるそうで す。 

旧型Windows MRコントローラーも使えるようですが、筆者の環境では試せていません。

Index、Quest 2のコントローラーと並べてみました。 パッと⾒た感じではQuest 2のコントローラーに似ています。

握ってみた図、⼿に⾷いつくような形状です。 

棒にボタンとスイッチを付けただけと称された旧型Windows MRコンと⽐べて 格段に進化しています。 

電池はコントローラー1機につき単三電池を2本、両⼿分で4本使います。 

はめ込み式の蓋となっており、振り回しても取れる⼼配は無いでしょう。 購入して使用する際は、eneloop等の繰り返し充電可能な電池を使う事をオススメします。

電池挿入時の重さは180g程、Indexコントローラーが200g程で、Reverb G2コントローラーの方が若干軽いです。 

実際の使い⼼地ですが、リングのせいか若⼲フロントヘビーかなといった感じです。 

また、リングが結構邪魔で、割とぶつけます。 

ボタンやトリガーの押し込みはQuest 2と⽐べ若⼲固めかなと思えますが、そこまで悪くはありません。 

充電はeneloop使⽤時で11~12時間程持つようです。 

勘違いしがちですが、IndexやRift S、Quest 2と違いタッチセンサーが搭載されておらず、ハンドサインを作る事が不可能となっております。 そのため、VRChatにおいて表情変更はボタンを押してのキーアサインとなります。

トラッキング性能

コントローラーのトラッキング範囲について、使ってみた印象としては上下⽅向に⾮常に弱く、額から上を認識せず、⼿を下ろしてしまうと認識範囲外になります。 

トラッキングカメラが横についているおかげか横⽅向にはとても広いです。 顔付近のトラッキングにも弱いようで、⽿元や⽬元に⼿を近づけると認識範囲外になります。 

具体的にはラジオ体操第⼀を綺麗にする事が不可能な位には認識範囲が狭いです。 

同じインサイドアウト形式のRift SやQuest 2と使⽤感が⼤きく異なり、正直か なり使い⾟いです。 

Rift S、初代Quest、Quest 2と同じ感覚で扱うのは難しいように思えます。 

ソフトウェアについて

⾒た⽬こそIndexに似ていますが、実際はWindows MRの後継機故か Windows10を最新状態にアップデートする必要があります。 また、SteamVRにネイティブ対応と謡っていますが、Mixed Realityポータル と呼ばれるWindows MR⽤ソフトを別途起動させないとSteamVRでの動作ができません。 

このソフトが結構曲者で、VRChat起動時に20分放置していると(SteamVRホームでは15分)スリープ状態となり、SteamVRが強制的に終了します。また、コントローラーは10分間放置していると⾃動的に電源が切れるようになっています。 

この仕様があるが故にVR睡眠(※2)に向いているとは⾔い難いです。レジストリエディタに新しい数値を⼊⼒すればスリープ時間を延⻑できるらしいのですが、実際試してみた所、⼊⼒数値と違う時間稼働してしまい、検証になりませんでした。 

Windows MRのバージョンによっては上⼿く動作しないとも聞きますので、基 本的にはスリープ時間は伸ばせないものと考えた⽅が良いかもしれません。

※2 VR睡眠:読んで字の如く、VRHMDを装着したまま睡眠する事を指す。⼀⾒すると珍妙に思えるかもしないが、ことVRChat内では愛好家が多くおり、割とポピュラーな⾏為だったりする。

HMDその他性能や所感

Indexと違い、USB端⼦が本体に内蔵されておらず、USB周辺機器を利⽤する際は外部から線を引っ張ってくる必要があります。 

イヤホンジャックが本体に搭載されておらず、イヤホンやヘッドホンを別途使う事ができません。 

VRChatにおいてはデフォルトキーバインドでは表情変更をする事ができず、キーコンフィグが必須となります。 

求められる推薦動作環境が⾼めで、HP公式サイトでは最低限必要な構成に GTX1080以上が必要となっています。

Lighthouse(※3)に対応しておらず、トラッカー等を扱う事ができませ ん。

※3 Lighthouse:Steamを運営しているValveが提供するルームスケールトラッキングシステ ム。 Lighthouse規格に対応しているとHMD、コントローラー等を共通規格として扱える。 執筆時現在ではHTC VIVE、HTC VIVE PRO、HTC VIVE Cosmos Elite、Index、Pimaxがこの規格に対応している。 

総評

Indexに外⾒は似ていますが、実際はWindows MRの後継機といった印象で す。 

故にIndexと同じようには扱えず、かといって同じインサイドアウト⽅式のRift SやQuest 2のようにも扱えず、画質、装着感、スピーカー⾳質、マイク⾳質に優れている⼀⽅、トラッキング範囲、コントローラーの操作感、ソフトウェアに問題を抱えており、⾮常にピーキーな性能のHMDのように思えます。 

推奨スペックが⾼めであるというのも⾒逃せない点で、現⾏ではVRChatにお いてはVRAMの関係上、RTX3090を使わないとフルスペックを発揮できないのではないかと思われます。 

VRChatにて扱う上では現状、値は張るものIndexを購⼊するか、コストパフォーマンスを取ってQuest 2を購⼊する事を個⼈的にはオススメします。 

尚、VRChat以外で扱う際は評価が異なり、例えば⾼画質、⾼⾳質、装着感も良好であるという点から動画鑑賞等の利⽤には⾮常に適していると思われます。

実際、付属のWindows MRコントローラーを扱わず、ゲームコントローラーを 利⽤するProject WingmanというフライトシミュレーターゲームのVRモードでは⼤変楽しむ事ができました。 

残念ながらVRChat向けとは⾔い難いですが、それ以外の⽤途においては光る 要素があるVRHMDだと⾔えるでしょう。

終わりに

ここまで読んで頂きありがとうございます。 

発売前はValveが開発に関わっているという事もあり⼤変期待しておりました が、いざ蓋を開けてみるとVRChatには向かないHMDで少々残念な気持ちがあります。 

個⼈的にはトラッキング範囲が特に致命的で、カメラが左右横ではなく上下に付いていたら評価は⼤きく変わっていたものと思われます。 

しかし、前述した通り動画鑑賞等に⾮常に向いており、⾼画質、⾼⾳質、装着感良好というのは有効利⽤する⽤途が多いものと思われます。 推奨スペックが⾼めであるというハードルはあるものの、試しにレンタルしてみるのも⼀興かもしれません。

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