製品レビュー

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VIVE Cosmos Elite 実機レビュー

皆さんこんにちは。

日本発VRSNS「バーチャルキャスト」とは?Oculus3機種の比較記事を書かせてもらった「chiroP」と申します。

今回はHTCのVIVEシリーズ最新機種「VIVE Cosmos Elite」のヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)のレビューをしたいと思います。

VIVEシリーズの強みとは?

2020年10月13日に発売された圧倒的なコストパフォーマンスを誇る「Oculus Quest 2」、12月には片目解像度2160×2160を誇る画質最強「HP Reverb G2」が発売を控えています。

「VIVE Cosmos Elite」は2020年3月27日発売で決して古い製品ではないですが、HMDのカタログスペックだけ見ると「Oculus Quest 2」や「HP Reverb G2」に劣っていると思われても仕方がないと思います。

しかしこの2機種ではなかなか導入が難しい機能があります。それは「HTC トラッカー」(以下トラッカー)を使うことです。

トラッカーは元々銃やテニスラケットをモチーフにしたデバイスにトラッカーを付けることによってコントローラーとして使うなどというのが本来の使用方法でした。

しかし「VRChat」や「バーチャルキャスト」、「Cluster」などのソーシャルVRアプリではトラッカーを腰や足につけてフルボディトラッキングをするために使用されています。

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この使用方法はHTC社のトラッカー開発者すら想定はしていなかったと元VIVE事業日本部門責任者の西川美優氏が明かしていました。(開発者必読! VIVEトラッカーやベースステーション2.0をうまく使うコツ【CEDEC2018】)

このトラッカー、実はVRゲームを行う場合はほぼ使うことがありません。しかしソーシャルVRアプリではトラッカーを使うことによって腰や足の動きをトラッキングすることができます。トラッカーを付けることによってリアルの体の動きを反映させてより可愛く、よりかっこよく動くことや、踊ったりするなど表現力を高めることができます。

トラッカーは「Oculus Quest 2」や「HP Reverb G2」で使うこともできなくはないのですが非公式の方法を使うことになり、パソコンに詳しい方じゃないと導入するは難しいと思います。

そのためトラッカーを使いたい場合は正式対応しているVIVEシリーズやValve Indexを購入するのが無難だと思います。

「VIVE Cosmos Elite」は現在HTC社から発売されているコンシューマー向け製品の中で最新機種になります。購入やレンタルを検討されている方の参考になるようにレビューしていきます。

VIVE Cosmos Eliteのスペック

アストネスより提供された「VIVE Cosmos」と「VIVE Cosmos 外部トラッキング・フェースプレート」を使い、「VIVE Cosmos Elite」を再現して実機レビューをします。

あまり知られていないのですがこのフェイスプレートには「VIVE Cosmos Elite」で使われている上部ストラップも付属しています。リンクボックスの構成と本体の色以外は「VIVE Cosmos Elite」と同様にすることが可能なのです。取付方法は公式ページをご覧ください。

それではスペック表から見ていきましょう。

名称

VIVE Cosmos Elite(HMD)

使用方法

PC接続

ディスプレイ解像度

2,880×1,700

(片目:1,440×1,700)

液晶ディスプレイ

リフレッシュレート

90Hz

視野角

最大110°

トラッキング

アウトサイドイン方式

IPD調整

ハードウェア調整

オーディオ

付属ステレオ・ヘッドフォン
3.5mmジャック

入力

内蔵マイク、ヘッドセット・ボタン

ヘッドバッド

ダイヤル調整付き大型パッド

センサー

Gセンサー、ジャイロセンサー、IPDセンサー

その他

フリップアップ機構搭載

価格(税込)

73,810円


VIVE Cosmos」及び「VIVE Cosmos Elite」は「VIVE CE」や「VIVE Pro」で使われていた有機ELではなく、液晶ディスプレイを採用しています。基本的に有機ELのほうが発色がいいと言われていますが、「VIVE Cosmos」で使われている液晶ディスプレイは発色も個人的にはよかったと思います。

Oculus Rift S」や「Valve INDEX」も液晶ディスプレイが使われており、今時の液晶ディスプレイは弱点であった発色も悪さを克服している感じに思えます。

ただしここで注意点があります。デフォルト設定でディスプレイモードが標準になっていますがこのままだと全体的に白っぽくなります。ビビッドモードを選択することで発色がよくなるので、特に理由がない限りはビビッドモードに切り替えて使用することをおすすめします。

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VIVE Cosmos Eliteの外観、機能など

「VIVE Cosmos 外部トラッキング・フェースプレート」を付けた状態です。本体色が青い以外は「VIVE Cosmos Elite」と一緒になります。左側面にHMDの電源スイッチがあります。


後方は「VIVE Pro」や「Oculus Rift S」のようなダイヤル調整式ストラップがあります。上部を固定するためのベルクロストラップは「VIVE Cosmos」よりも幅が太くなっており、装着時の安定感を向上させています。

HMDの下部中央(緑色の部分)には内臓マイクがあります。内臓マイクはこもった感じであまり音質が良くないと感じました。ただ聞き取り辛いと言うほどに悪くも無いです。

Oculusシリーズのように価格を抑えている商品ならまだわかりますが、HMDだけで7万円以上するVR機器なので、もう少し高品質のマイクを搭載してほしいと思うところはあります。

IPD(瞳孔間距離)調整をするダイヤルが右側面(赤色の部分)にあります。「Oculus Rift S」や「Windows Mixed RealityのVR機器」のようなソフトウェアで調整ではなく、レンズを直接動かして細かく調整できる点はいいポイントです。

「VIVE CE」や「VIVE Pro」には眼鏡をかけてもレンズに干渉しないようにディスプレイを前後に動かす機能がありましたが「VIVE Cosmos」にはその機能がありません。公式ページではほとんどの眼鏡はヘッドセット内に収まると記載されていますが、念のため眼鏡が干渉しないか確認したほうがいいかもしれません。




純正ヘッドホンは「HTC VIVEデラックスオーディオストラップ」と同じようなスピーカーになっています。位置を微調整したり、取り外すことも可能です。3.5mmジャックで接続されているので他社のヘッドホンを使うこともできます。

しかし、この付属のヘッドホンはケーブルを固定する機能も兼ねているので他社のヘッドホンを使う場合は「ヘッドフォン用交換キット」をHTCカスタマーサポートに問い合わせて取り寄せないといけません。無償で取り寄せることができるようですが、ちょっとしたパーツだけなので最初から同梱してほしいところです。

 

フェイスクッションを取り外した画像になります。赤い印のところがフェスプレートを外すときに使うレバーになります。左上にヘッドセットケーブルの差し込み口があります。右上にはイヤホンジャックと様々なデバイスを接続するためのType-C端子があります。アイトラッキング用デバイスやリップトラッカーはここから接続するようです。



フェイスプレートを外した画像です。上にフェイスプレートと接続するための端子があります。恐らくHMD内を排熱するためであろう小型ファンがあります。VRをプレイしている時はスピーカーを付けていたためどのくらいファンノイズがあったか分かりませんでした。HMDを外した時もファンノイズが気になることはなかったのでそこまで大きくなかったと思います。

「VIVE Cosmos」「VIVE Cosmos Elite」にはHMDを上に持ち上げて固定するフリップアップ機構が搭載されています。フリップアップ機構は何気にありがたい機能です。ワンタッチで外の視界を確認することができます。わざわざHMDを取り外したり、手で持ち上げなくてもいいのでモニターを確認する時などに非常に便利な機能になります。ただしケーブルが断線したり、HMDとストラップの付け根部分が破損する可能性があるのでフリップアップする時は乱暴に扱わないように注意しましょう。

装着感はフリップアップ機構せいか他のVR機器と違って額で支える感じがあります。ただ全体的には幅の広いベルクロストラップ、ダイヤル調整式ストラップのおかげでしっかり固定できている印象です。長時間装着しても大丈夫なように設計されていますのでVRゲームをやりこむ方、長時間ソーシャルVRアプリをする方に向いています。

私が最初装着した時はなかなかIPD調整がうまくいきませんでした。原因は正しい位置で固定していなかったことだと判明しました。公式ページに正しい装着の仕方が載っているのでそちらを参考に装着してみてください。

「VIVE CE」から乗り換えを考えているなら解像度が上がって画質が良くなっているのでおすすめできるHMDだと思います。

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なぜVIVEトラッカーが必要に?

ここまで「VIVE Cosmos Elite」のHMDについて紹介してきました。このレビュー記事で「VIVE Cosmos Elite」がトラッカーを使えることを強調していたのには理由があります。

現状VRゲームには問題点が数多くあります。VR酔いや蒸れやすいなど激しい動きをするのには向いていません。

コミュニケーションを主体とするソーシャルVRアプリは激しい動きをすることが比較的少ないので長時間プレイするのに向いています。「VRChat」などで足を動かしているアバターを見ていると次第に自分も足を動かしてみたいと思うようになる方も出てくると思います。(私もそうでした)

Oculusなどでフルボディトラッキングをするには個別にベースステーションを用意したり、外部ソフトを使って設定する必要があります。これは非正規の方法でSteamVRのアップデートで今までの方法が使えなくなったことが過去にありました。

自分で設定するのに自信がない方は、VIVEシリーズや「Valve INDEX」などの正規でトラッカーに対応しているVR機器を選んだ方がいいと思います。

2020年11月現在「Valve INDEX」は売り切れで入荷待ち状態、「VIVE Pro」も生産を終了したせいか店舗在庫のみになっています。「VIVE Pro eye」もありますが値段が約18万円と非常に高額です。新品で購入するには「VIVE Cosmos Elite」が一番安価で入手しやすいトラッカーに標準対応したVR機器になります。

安価といってもフルセットで約12万円と高額です。VR機器でトラッカーを使うには多額の費用が掛かりますので、レンタルして試してみるもの一つの手です。アストネスでは多種多様なVR機器がレンタル可能ですので自分のライフスタイルに合うVR機器を探すのに役立ちます。

以前の記事でもありましたがことわざの通り「百聞は一見に如かず」で実際に体験してみるのが一番いい方法だと私は考えています。レビュー記事を書いて皆様に伝えようとしても「百聞は一見に如かず」に勝るものはありません(笑)

「Oculus Quest 2」の登場によりVR機器はさらなるステップへ進むことは間違いないと思います。しかし「Oculus Quest 2」だけでは全部を補えるというわけでもないというのも事実です。自分に合ったVRライフを送るためにいろいろなVR機器を試してみることを強くお勧めします。